銀色の家、されどワシの体重には抗えん話

キャンプ

『軽さとは、金で買う自由である』とは、誰かの名言か、それとも単なる個人輸入の言い訳か知らんが、滋賀県は高島市・朽木の河原で、その言葉を体現するような光景があったで。ワシは猫である。名前はたま。テント泊には基本的に興味がない。……という建前で、実際にはめちゃくちゃ気になっとった。

安曇川(あどがわ)の澄んだ流れのすぐそばに、白っぽい石がゴロゴロ転がる河原が広がっとる。上流を見上げると赤い鉄橋が渡っとって、山の緑と相まってなかなかの景色や。この日オトンが陣取ったんは、そんな河原の一角。

石ころの上に、テカッと光る三角錐の物体がスッと立ち上がった。太陽の光を反射してギラギラ光る様子、まるで宇宙船の切れ端が不時着したみたいや。ポールは細く頼りなさそうやのに、なんや妙に自信満々に空へ向かって伸びとる。

「Zpacks」いうブランドの、ダイニーマいう特殊素材で出来とるテントらしい。個人輸入したもんやて。オトンが「円安のせいでエグい値段になってもうた」てぼやいとったけど、ワシからしたら「エンヤス」も「インディーユニュウ」も知ったこっちゃない。とにかく軽そうな見た目やということだけは分かった。

登山者向けの超軽量設計らしく、生地は薄い。薄すぎて、ワシが軽くポンと前足を乗せただけでも「ペコッ」て音がしそうな頼りなさや。それでいて、雨も風もちゃんと防ぐんやから、見た目で判断したらあかんもんやな。人間界にも「線が細いのに芯は強い」やつ、たまにおるやろ。あれと同じや。

テントの隣には、いつもの相棒(愛車)がちょこんと停まっとった。荷室からタープを張って、日陰を作ってくつろぐスペースにしとるんが、オトンのいつものスタイルやな。ナンバーを見ればわかる通り、大阪からわざわざここまで走ってきたっちゅうことや。近場でこれだけの景色に出会えるんは、なかなかの掘り出し物やと思うで。

赤い鉄橋の下は、ちょうどええ日陰になっとって、椅子を2脚並べて焚き火の準備もしとった。焚き火台の横にはボトルやカップも置いてあって、これから始まる時間をじっくり待っとるような雰囲気や。河原と枯れ草の匂いに混じって、テントの生地特有のちょっと化学っぽい匂いもした。ワシの鼻はレーダーみたいにピクピク反応したけど、これは食えるもんやない、いうことだけはすぐ分かったで。

橋を背景に、テントと愛車が並んどる図はなかなか絵になる。川のせせらぎと、遠くに聞こえる鳥の声。人も少なくて、静かな時間が流れとった。

今回、実はこのテント、ただの見た目チェックやのうて、ちゃんとした実地テストも兼ねとった。設営のしやすさ、河原の石ころだらけの地面での安定感、中の広さ、風が吹いた時の揺れ具合……オトンなりに一通り確認しとったみたいや。

結果から言うと、文句なしの出来やったらしい。あの薄っぺらい生地から想像もつかんくらい、風にも雨にも動じん安定感やったし、中に入ってみても圧迫感がない。何より、担いだ時の軽さは他のテントとは別次元やて。

これはもう、ただの「試しに使ってみた」やなくて、今後の夏場キャンプのメインテント昇格が決定したそうや。今までのテントに感じとった「ちょっと重いな」「設営に時間かかるな」いう不満が、これ一台で全部解消されたらしい。ワシからしたら軽いも重いも関係ないけど、オトンがここまで手放しで褒めるんは珍しいから、よっぽど気に入ったんやろな。

――結局、今日もワシの寝床はソファで十分や。銀色の三角も悪ないけど、あの薄さの上で丸くなる勇気は、さすがのワシにも出んかったわ。

そう独りごちながら、ワシは家でまた丸くなるたまなのであった。

使用したテントはこちら

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