氷点下の夜、されどテントは涼しい顔をしておった話

キャンプ

ワシや、たま。

『テントとは、薄い布一枚で人間の命を寒さから守る、小さな決死隊である』

そう誰かが言うたかどうかは知らんが、松尾芭蕉も「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」て詠んどったくらいやから、昔から旅人いうんは寒さと隣り合わせの生き物やったんやろな。ワシは猫である。名前はたま。テント泊には基本的に興味がない。……という建前で、実際にはめちゃくちゃ気になっとる。

2025年4月末、ニセコの草地に、オトンが久しぶりにやる気を出してテントを広げておった。

ポールがしなって、生地がバサッと立ち上がる。ドーム型の骨組みがシュンと組み上がる様子は、まるで新入社員が初日だけキビキビしとるのに似とったで。ZEROGRAMいうブランドの「EL CHALTEN ZEROBONE v2 2P」いうテントらしい。名前だけ聞くと、どこかの秘密結社の暗号みたいや。

日中はポカポカやったのに、夜になったら空気がスンと冷たなった。体感、夜中は2℃くらいはあったんちゃうかな。ワシやったら丸まって毛玉になっとる気温や。人間はこの寒さの中、薄い生地一枚で「さあ寝るぞ」言うて潜り込んでいきよった。正気とは思えん。

翌朝、フライシートの中を覗いたオトンが「おお」て声を上げた。結露が、ほぼ無い。この寒暖差でびっしょりにならんとは、なかなかの働き者や。まるで、鍋の中で最後まで角が立たんかった大根みたいなもんやな。煮込まれても崩れん、あの感じ。

ワシからしたら、寒い夜に外で寝るいう発想自体が理解不能やけど、道具がちゃんと仕事しとる、いうんは素直に見上げたもんやと思うわ。

――結局、今日もワシは家の中で丸くなっとるのが一番賢い選択やと再確認したんやけど、あの結露知らずのテントだけは、ちょっとだけ気になる存在や。

そう独りごちながら、ワシはまた丸くなるたまなのであった。

使用したテントはこちら

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